著者: 茂木健一郎
出版社: PHP研究所
発売日: 2019-9-26
この本は日常生活でのいろいろな脳の使い方、物事の考え方が書かれていて、タイトルの通り、脳HACKの方法が多岐にわたって説明されています。
基本、1つのメソッドについて2ページに渡って書かれています。
この本1冊に100個のメソッドが書かれています。
一つのことについて解説された本ではなくて、脳についてのバラエティに富んだ内容が書かれているので、”こんな本です”と説明するのがとても難しいです。実際この読書感想記事も、何て書こうかかなり迷いました。でもなかなか面白かったので記事を書いています。
「パッシブ」より「アクティブ」のほうが幸せになれる
特に興味を惹かれた部分は、”「パッシブ」より「アクティブ」のほうが幸せになれる” という脳HACKです。
ストレス発散のために、テレビや映画を観る、買い物をする、というのは「パッシブ・レジャー」で、受動的な行動です。自分から積極的かつ主体的に行動するレジャーではなく、受け身のレジャー。私達の幸福度を上げるのにはあまり貢献しないそうです。
幸福度を上げるのは「アクティブ・レジャー」で、これは、「釣りをする、山登りをする、ゴルフをする」などがあるそうです。能動的な行動のほうが「幸せだ」と感じる瞬間が多いそうです。
で、ここで強調したいのが、読書について書かれていることです。
読書は一見「パッシブ・レジャー」のように思いますが、そうではありません。読書は「アクティブ・レジャー」に属するそうです。僕は読書が大好きなので、この情報は嬉しいです。
テレビや映画は自分で能動的に考えなくても、目や耳から勝手に情報が流れ込んできます。疲れている時でも、ボーッと見続けることができます。しかし、読書は、目から入ってきた文字情報を、想像力を駆使して、情報を補って、情景を思い描いたり、ニュアンスを読み取ったりと、複雑な作業を必要とするので、脳の活動量が少なくないそうです。だから読書は「アクティブ・レジャー」なのです。読書は幸福度を上げるんですね!
僕が個人的に感銘を受けた茂木さんの速読法についての考察
もう一つ、「なるほど!」と思った部分があります。
それは速読について書かれた部分です。茂木さんは速読法という読書方法について、あまり評価していないそうです。
本を10分程度で読んでしまったら、脳の中で行われる情報処理としては浅いものにならざるを得ないと解説されています。
例えば2時間かけて読んだとしたら、そのぶん脳では深い情報処理が行われるとの事です。茂木さんの解説によると、速読法によって、情報は得られるかもしれませんが、読書によって立ち上がるかもしれなかった脳の中の別のプロセスが立ち上がらない。文字と文字の間に秘められたディテールを感じ取るのも、脳にとって貴重な体験なのだと書かれています。
僕としては、この部分について、激しく同意です!
僕にとって、読書は趣味であり、とても楽しい優雅な時間を過ごす事のできる贅沢なひとときです。「本からは有益な情報さえ得られれば良い」という人たちとは目的が全然違います。僕にとっての読書とは、クラシカルミュージックをのんびりと時間をかけて聴いて楽しいひと時を過ごしているような感覚です。
僕は過去に、速読術の本を何冊か買いましたが、こういう速読術という考え方は、「僕にとっての読書とは目的が違うよな~」と違和感を感じていました。
速読術界隈では、1分でも速く読み、1冊でも多くの本を読んでいる人こそが偉い、それが正義、1冊読むのに何時間もかけている人は愚鈍、みたいな風潮があり、息苦しさを感じていました。
この「脳HACK大全」の、「書くスピードに近い速さで読む”ディテール脳”を育てる」の部分を読んだおかげで、月に1冊でも多く読むことが目的の、ガツガツとした読書ではなくて、「自分なりにじっくりと時間をかけて読書を愉しめばいいじゃないか」と思うに至って、何か肩の荷が下りたような感じがして、ほっこりしました。この脳HACKの解説については4ページが割かれていました。
僕にとってのこの本のハイライトは、この「速読法に対する考察」について書かれた部分でしたね。たった4ページの解説ですが、大きな収穫でした!